優しい君だから










ナナミが死んだ。




イオは、その事実をグレッグミンスターで知った。
シュウからの伝達で、すぐさま城にきてほしいとの事だった。
大切な義姉を失った悲しみで、シュリがふさぎこんでいるらしい。
しかも軍主をやめるとまで言っているらしいのだ。
「行くの?」
伝言のためにやってきたルックは言った。
その顔は、明らかに面倒くさそうで。
少し苦笑じみた顔でイオは答える。
「行かなきゃ。わざわざ僕に頼ってくるぐらいなんだ。それくらい深刻になってるんだろ?それに…」
「?それに…何?」
「それに…ルックが来てくれたしね。」
イオは、少し顔を赤くしながら、とてもきれいな笑顔で言った。
ルックもそんなことを言われれば、悪い気はしない。
結局ルックの魔法で一気に行くことにした。
呪文を唱え、二人の体が風に包まれたとき、ルックはイオに気づかれないような声で呟いた。



「君が傷つくようなことにならないといいけどね―――」





ラグナ城に着いたイオは、すぐにシュリの部屋へと向かった。
珍しいこともあるもので、いつもなら絶対について来ないはずのルックも一緒だ。
二人が部屋に入る前、ドアの向こうで言い争っているような声が聞こえた。
どうやらシュリの部屋には、先客がいるようだ。
「いつまでもふさぎ込んでおられては困ります。そろそろ軍務の方もこなしていただかなければ・・・」
「―――だから、もうやめたって言ってるでしょう!?もうすぐここも出て行きます。もう僕の事はほっといて下さい!」
「シュリ・・・」
そんな会話を聞いているうちにイオの顔がだんだん険しくなってきた。
そして、突然ドアを開けたのだ。
「失礼するよ。」
「―――!イオさん・・・。」
そこにはシュウを始め、幹部クラスの主だった顔があった。
「シュリ・・・ナナミが死んだそうだね。」
「ええ。僕を・・かばって死んだんです。僕にとってナナミは、たった一人の家族だったのに。それすらも守れなかった。」
「だから・・・だから、軍主を辞めるというの?」
そう問う顔は一見穏やかで。
だが、答えなければ許さない、といった表情。
少しの間の後シュリは答える。
「―――僕にはできません。こんな大役、僕にできるはずがなかったんだ。もっと早く辞めてれば、ナナミは死なずにすんだのに・・・」




「君は!ナナミが死んだから軍主を辞めるのか!?簡単に切り捨てられるのか!君の決意はその程度のものだったのか!」
(そうか・・・だからイオはこんなにも怒っているんだな。)
後ろで見ていたルックは思った。
軍主とは、軍を束ねる者。
だからいつも皆の事を考えていなければならない。
それがいくら大切な人を失ったとしてもだ。
シュリは、ナナミを失ったショックで、周りの事が考えられなくなっている。
それにイオは腹を立てたのだ。
「君が軍主を辞めたいならそうすればいいさ。だけど、残された人たちはどうなる?君を頼ってこの城にやってきた人たちの望みを、君は踏みにじることになるんだぞ!?君はそれすらもわからなくなっているのか?君一人が、苦しい想いをしてるんじゃないんだぞ!何も失わずに誰もが生きているはずがないだろう!誰だって大切なものを失って、それでも未来のために戦ってるんだ。それなのに君はここで諦めてしまうのか!?」
「じゃあ、この悲しみはどうすればいいんですか!感情を無くさなければならないんですか?そんなの、僕は嫌だ!僕はイオさんみたいに冷徹じゃない!」
「僕が、冷徹?」
「だから、そんなに簡単に割り切れるんでしょう?実の父親も平気で殺すような・・・」




パシーーーン。




乾いた音が部屋中に響く。


明らかに言い過ぎたシュリを止めようとしていた、フリックとビクトールは驚いた。
叩かれたシュリも何がなんだかわからないといった表情で、頬を抑えている。
他の者もみんな驚いていた。
ただ一人、叩いた本人を除いて・・・



「君、バカじゃないの?」



叩いた本人―――ルックは、涼しい顔をしながら言った。
いや、しかし、目が笑っていない。
「イオが冷徹だって?はん、本当に何もわかってないんだね。イオは解放軍を率いてたとき・・・」
「ルック、やめて。」
「?何でさ。こんなわからずやにあんなこと言われていいの?」
「ルック。」
と呼びかける表情は、とても悲しそうで、ルックは思わず口を止める。
イオは、周りを見渡し、シュウと目線を合わせる。
シュウも、何かを察し頷いた。
そしてイオは、ドアへ向かう。
ドアの前で、向こうを向いたまま、イオは言った。


とても静かな声で。

「シュリ。忘れないで。どんなことが起こっても、君は前へ進み続けなければいけないんだ。君は、軍主なんだから――――」
そして、出て行った。
ルックもそれを追いかけるように出て行く。
シュリは、それからしばらくの間呆然としていた。
肩に手を置かれ、振り返ると、フリックとビクトールが側に来ている。


そして・・・

「あれはお前が悪いぞ。」
と、フリックの言葉。
「何もわかってないって、一体どういうことですか?教えてください。」
そう聞くと、二人は顔を見合わせた。
そして小さなため息をついた後、解放軍の頃のことを話し始めた――――――





→後編

ル、ルク坊じゃないですね、全然。
しかも終わってないし・・・
すいません短い文かんがえるの下手なんですぅ(汗)
えっと、とりあえず内容については後編で。


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