ストロベリーキャンドル










「なぜお前は俺を恐れない?」

吐き捨てられた言葉。
けれど、それはどこか悲しげな声色でもあった。

「あなたを恐れる必要などないから。」

答えられる言葉は、とても優しい響きを持っていた。





イオがここ、ルルノイエに来てから、一ヶ月が過ぎようとしていた。
ルカの寝室であり、イオの住む部屋でもある一室。
今、二人はその部屋にいる。
先程の会話は、イオがここに来てから幾度となく交わされたものだった。
同じ質問。
そして、同じ回答。
ルカはイオと過ごすようになってから何度も同じ質問をした。
そして返されるのも同じ回答であった。
「お前はいつも同じ事を言うのだな。」
「それはあなたも同じことだけど?」
「俺は・・・お前の答えがよくわからない。」
「・・・・・・そう。」
ルカは今、3人ほどが余裕で座ることのできるソファに深く座っている。
対してイオは、ベッドの端に腰掛けていた。
「この国の全ては俺を恐れている。俺を狂皇子と呼び、ひれ伏す。しかしお前は違う。なぜだ?」
「・・・ルカは・・・僕に恐れてほしいの?」
イオはベッドから下りると、静かにルカの元へと歩み寄った。
「あなたはいつも、とても寂しそうな目をしている。僕はそれが気になって仕方ないんだ。あなたの事を恐れたことはないよ。恐れる必要もない。」
イオはそっとルカの指先に触れた。
「あなたは今まで1人でいたんだね。人をたくさん殺し、人々に恐れられるように自分で仕向けて。だけど・・・」
彼の手を軽く握った。
「この世界は・・・1人で生きるには広すぎるよ・・・」
自分の頬に彼の手を当てた。
彼の手に摺り寄せて、瞳を閉じる。
「あなたは僕に似ている。」
「お前に?」
「そう。1人で生きようと必死にもがいている者の瞳。」
「そんな事を言ったやつはいない。」
クスリとイオは笑いをこぼす。
「皆、分からないのかな。でも僕にはわかる。」
「なぜだ?」
「僕も・・・同じ事を考えていたから。」
「どういう・・・ことだ?」
イオはルカの手を離し、ソファへと腰掛けた。
自分の右手に巻かれている包帯をゆっくりと解いてゆく。
ルカはおとなしく、その様をじっと見つめていた。
包帯が床に落とされ、イオの右手があらわになった。



そこには、禍々しいオーラを放つ紋章が刻まれている。


死神の鎌のような形であるそれ。
独特の雰囲気をかもし出している。




‘ソウルイーター’




まさにその名にふさわしいオーラである。
イオは自分の右手に宿るそれを見ながら、ポツリと言った。
「この紋章は、僕の親しい人間の魂を好む。解放戦争の時・・・僕は大切な人を失った。そして、その魂をこいつに喰われたんだ。」
ルカも黙ってその紋章を見つめた。
「解放戦争が終わった後、僕はトランを出た。あそこには僕の大切な人が多すぎる。あそこにいたら、きっとまた魂を喰うことになる・・・そう思って。」
イオは続ける。
「あなたに会うまで、僕はずっと一人で旅してきた。人と係わり合いにならないように・・・できるだけ人のいない所へいった。」
そこで一度言葉を区切り、イオは右手を左手で覆う。
「僕は・・・この紋章と共にいる以上、一人で生きていかなければならない、そう思っていたんだ。だけど・・・」
右手を握り締める。
「やっぱりだめだった・・・」
ふいに、瞳が揺れる。
とても悲しげで、そして美しかった。
「一人になる寂しさが、いつでも僕を襲うんだ。誰かを愛したくて・・・誰かに愛されたくて・・・とてもつらかった・・・・・・」
「誰かに・・・愛される?」
「そう。所詮、人は一人では生きていけないのだと思い知らされたよ。僕は、トランの英雄と言われるようになったけれど、誰かに助けられなければ生きていけない、弱い存在でしかない。」
「俺も、同じなのか?」
「きっと、同じ。ルカだって、一人のちっぽけな人間なんだ。僕があなたに始めてあった時、なんて悲しい瞳をしてるんだろうと思った。誰かに愛してほしくて、仕方ないような、そんな瞳だった。」
イオは、右手をそのままに、左手でルカの右手を取る。
ルカの手のひらは、イオのものより一回りも大きかった。


指先が、絡み合う。

「俺は、あの時、お前の瞳に惹かれたんだ。それは、自分に似ていたからなのか?」
「さあ・・・それはわからない。でも、僕もそうやってあなたに惹かれた。そして、今はあなたがこんなにも愛しい・・・」
イオの視線が、ルカのそれと交わる。
「忘れないで。僕はあなたを愛している・・・」
優しい、優しい瞳だった。
ルカはイオを引き寄せる。
自分の体にすっぽり納まったイオを、ルカは静かに抱きしめた。





あなたはいつも聞くけれど。




僕があなたを恐れる要素はどこにもないのです。






―――どうか





忘れないでください。






僕はあなたを愛しています。





end

何が言いたいの?そう思った皆さん、いいツッコミです(笑)
ただ単にイオにある台詞を言わせたかっただけだったり。
そのために一本話を書きました。
おかげで話がぜんぜんわかりません。ごめんなさい。
えっと、題名について。これ、花なんだそうです。
花言葉は「私を忘れないで」。
今回の話にあいそうだったので、使わせていただきました。
でもぜんぜんどういう花か知らない・・・
誰か教えてください(笑)




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