タナキさんへ
「落ち込んでいるカイルを後ろから優しく抱きしめてやるゲオルグ」
お納めくださいませ<m(__)m>










どうして自分はこうなのだろう…。口ばっかり上手くて、女の子には思う存分キャーキャー騒がれるくせに、本当は大事なもの一つ守れはしない。
そもそもカイルは剣術は優れているが、戦士として必要な体力が決定的に欠けている。女王騎士は女王を守護する騎士であって、自ら進んで戦火へ身を投じるような傭兵や、あるいは賞金稼ぎなどとは違うのだ。体を鍛える間にも、カイルは礼儀作法を一から覚えなければならなかったし、余りの覚えの悪さにフェリドに付きっ切りで指導された事もある。今となっては懐かしい思い出だ。
フェリドの顔を思い出してカイルはまた溜息をついた。膝を組んで伏せていた顔を上げ、橙色の空を見つめる。
姫君も太陽の紋章も守れなかった自分を、フェリドは絶対に責めない。
わかっているからこそ不甲斐なさは倍増されるのだ。今日の戦闘だって――不注意で敵の一撃を喰らい、王子の手を煩わせてしまった。

『カイル!!』

思わず、といった感じで前方に飛び出してきた王子を思い出す。その時カイルは既に地に伏せており、とても応対出来るような体勢ではなかったため、王子がいなければ危うかっただろう。
そんな事態に陥ってしまった事が情けない。自分の力不足は、常日頃から感じている。例えば剣で攻撃を受けた瞬間…腕力の不足により、押し返せないなど度々。

「力が、欲しいなぁ」

決して非力な方ではない。ただ、ともに前衛で戦う者達がゲオルグであったり、剣豪たちであったりなど諸事情で、どうしてもカイルは攻撃面では頼りなく見えてしまう。代わりに回復を一挙に引き受けているので、差し引きすれば遅れは取っていないのだが、それでも男として悔しいのだ。
力不足は敏速力でカバーするしかない。が、体力的に劣っているのは辛かった。戦で長期戦を強いられる事になっても不利だ。
本気でどうにかならないものかと思っているのだが、なかなか相談できる相手がいない。
こういうことこそゲオルグに聞くべきなのかもしれないが、未だ男のプライドが邪魔して聞けずにいる。

「はぁ」
「どうした」
「わわ!」

突然背後からかけられた声は、伸びる影よりも先にカイルの元へ届いた。それから暫くしてから、声の持ち主がカイルの元へと辿り着く。
咄嗟のことで可笑しな声を出してしまった事が恥ずかしくて、顔が見えないように前方を向いて「むー」と口を尖らせた。

「カイル?」
「聞こえてますよーだ。こんな時になんですか?ゲオルグ殿」
「こんな時?」
「そうですよー。夕焼けが綺麗なこんな時に、情緒ってもんを知らないゲオルグ殿は場違いだって言ってるんですー」
「何気に酷いな」
「そんなことないですよ?」

にこーっと顔を作って振り返る。そして、出来るだけ楽しい事を考えるようにした。ゲオルグの前で弱いところを見せるのは癪なのだ。

――楽しいこと…ゲオルグがチーズケーキの食べ過ぎて額にニキビが出来た事とか?

思い出して思わず顔を顰める。そういえばあのニキビはどうなったのだろう。知らないうちに消えたのか、今も髪の下にあるのか…。
本気でそんな事を考えているカイルは、完全に一人の世界を作ってしまっている。ゲオルグは腕を組んで今のカイルを分析しているが、心の内まで読めるわけではない。
カイルが顔を顰めているのと同じように、ゲオルグの眉間にも皺がよって行く。

「おい、また変なこと考えてるだろう」
「へ?あれ?何の事ですかぁー?」
「まったく…探して来てみればろくなことがないな」
「あ、酷いですよそれはー。ていうか男2人で何ろくなことがあるって言うんですか」
「まぁその通りなんだがな」
「でしょ?だったら揚げ足取るのも屁理屈言うのもやめましょー」

険しい顔からまた笑顔を作ってカイルは立ち上がった。時間的には食堂が開き出す頃だ。ゲオルグの隣を通り過ぎて、「夕食ですよ」と笑い掛けた時――突然カイルが一度大袈裟に体を揺らしてから、ぴたりと止まる。
胸部には後ろからゲオルグの右手が回り、右頬には同じように前から回りこんだゲオルグの左の手の平があった。
優しく抱きしめられ、思わず息を飲む。

「何を悩んでるのか知らんが、言いたくなったらいつでも言っていいんだぞ?」
「ゲオルグ殿?」
「遠慮はいらんからな」

今更俺達の間で、というゲオルグは直ぐにカイルを解放し、髪をくしゃりと撫でた。父性を刺激されたのか、あるいはもっと甘い感情なのかはわからないが、おそらくはどちらもだろう。
カイルは、思わずゲオルグに飛びつきそうになった衝動を、必死で抑える。
ただでさえ負けているのだ。こっちの主導権までは渡したくない。それでも、平生が保てないくらいには、愛している。

「何の呪文ですか、それ」
「呪文?」
「いっつも、そうやって俺を揺さぶる。卑怯ですよ」

泣きそうになりながら、中途半端に俯いたカイルの背中を寄せて、ゲオルグはまた抱きしめながら頬にキスをした。

心に、優しさが染み入って、また、泣く。








Q・珊瑚様のお言葉
ラブラブにしてみましたです(^^)
ではではタナキさん、リクありがとうございましたv

タナキのコメント
素敵な作品をいただきましたv
大人なゲオルグがナイスです!!
弱みは見せたくないカイルだけど、そういうところもしっかり
ゲオルグにはばれちゃってるんですよね。
Q・珊瑚様、どうもありがとうございました!!


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