SHINE 










ある晴れた日のこと。

同盟軍の軍主は浮かれていた。
なぜなら今日はトランの英雄が一緒に行動をしてくれているからだ。
目に見えて浮かれている軍主に、ルックははあといやそうなため息をついた。
「なんでついてきたのさ?」
といって、ルックはことの原因を見つめた。
そう、イオ・マクドールを。
「なんでって・・・ヒマだったから?」
小首を傾げて少し悩んだ後、返ってきた答えはそれだった。
ルックはとても不愉快そうに顔を背ける。
そのまま離れていこうとした彼の肩をイオが掴んだ。
「やだなあルック。冗談だよ。」
ニコニコと笑う彼。
反対にルックはどんどん不機嫌になっていく。
「・・・僕、その手の冗談通じないから。」
「ごめんごめん。」
全く気にすることのない様子で謝られても、ルックとしては面白くない。
そんな空気を察したのか、イオは笑みを消すとルックの耳元に唇を寄せる。

「ホントは、君が参加するからに決まってるじゃないか。」

こっそりと囁いた。

それを聞いて相変わらずの無愛想な顔のまま、機嫌がよくなったことを。
トランの英雄はちゃんと見抜いていて。

くすりと笑みをこぼすのだった。





「何の話してるんですか?」
割り込もうと顔を覗かせたのはシュリ。
「・・・うちの軍主は頼りないなって話だよ。」
ちらりとシュリを見やり、ルックは吐き捨てた。
「なにそれ!」
「何ってホントのことだろ?」
しれっと答えるルックに、シュリは応戦しようとする。
が、口ゲンカでシュリがルックに勝てるはずない。

結局。

「イオさ〜ん。」
とイオに泣きつくのだった。

「ボクってそんなに頼りないですかっ!?」
捨てられた子犬のような眼差しでイオにしがみつきながらの質問。
人のいいイオが頼りないなんていえるわけがなく。
「そ、そんなことないと思うけど・・・」
当り障りのない答えを返した。
「イオがそんなにはっきり役に立たないなんて言えるわけないだろ。」
ルックの一言がシュリの頭に岩となって落ちた。
シュリは恨みがましい顔でルックを睨みつける。
しかしルック本人はいたって涼しいままで。
「ルックがいじめる〜〜!!」
いっそう激しくしがみつくシュリに、イオは苦笑を漏らすのだった。
「ほらほら、そんな風にしてるから・・・」
「バッカじゃないの?」
「ルック!もう・・・ね。しゃきっとしないとモンスターにもつけいられちゃう・・・よ。」
「え?」
イオの纏う空気が変わったことを察し、シュリはイオを見上げた。
先程までの穏やかな顔がすっかり消えてしまっている。
変わりに「戦士」としての顔で正面を見据えていた。
貫かれるような、鋭い眼光。
シュリは抱きついていた腕を解き、同じ様に後ろを向く。
ルックはすでにそちらを見つめていた。
「お出ましだよ。」
大勢のモンスター。
血気盛んな眼でこちらをじっと睨んでいる。
「皆構えて!」
シュリの合図と共に一斉に構え、そして飛び出していった。





そこら中で、モンスターたちの断末魔が上がる。
実力的にたいしたものはいないが、何しろ数が多すぎる。
少しずつ、皆に疲れが見え始めていた。

かなり戦闘慣れしているはずのルックやイオも、その表情から読み取れるほどである。


(・・・うっとおしいな。)
後方から魔法で援助しながら、ルックは思った。
全体魔法で一気にやってしまいたかったが、仲間が巻き添えを食らってしまう。
それに、全体魔法は詠唱時間が桁外れに長い。
自分1人でやるには少々荷が重すぎた。
しかし、そんな事を言っている間にどんどん魔法力を消費している。
早くしなければ魔法自体が使えなくなるかもしれない。
チッと舌打ちすると、移動魔法で少し離れたところに飛んだ。
そして詠唱を始める。

唱えている間にきっと誰かが気付くだろう。
少なくとも、必ず気付いてくれる人物をルックは知っていた。

案の定、詠唱し始めてから間もなく、イオがこちらを向いた。
近くにいたシュリに指示を出し、徐々に近づいてくる。
これで何とかなるだろう、そんなことを思っていた時。


「ルック!後ろっ!!」


イオがあらん限りの声で叫んだ。
とっさに振り返った後ろには、1匹のモンスター。
大きな手を振りかざし、今にも襲い掛かろうとしているところだった。
一瞬の間、ルックが思考を張り巡らせる。

魔法で逃げたり攻撃することは出来ない。
では避ける・・・いや、そんな事に気をとられて魔法の詠唱が途切れてしまったら面倒だ。
幸いこいつはそんなに攻撃力も高くない。
一発ぐらいで死んだりはしないだろう。


・・・どうせ簡単には死なない体だ。


詠唱に集中しようと瞳を閉じた。

そして。


体を誰かに抱かれ、ふわりと浮く感触。
一瞬後、叩きつけられる感覚に襲われた。
体に攻撃を受けた痛みはない。

瞳を開けて初めて、自分がかばわれたことを知った。


自分の上に乗ったまま動かない体。
「イオ!?」

体を起こし、名を呼んでも返事はなかった。

焦るルックに先程のモンスターが襲い掛かる。
が、モンスターはルックに触れることなく二つに切り裂かれた。
「大丈夫か!?」
声をかけたのはビクトールである。
見上げれば、仲間は皆、モンスターから離れていた。
きっとシュリの指示がいったのだろう。
無言でイオの体をビクトールに預けると、ルックは魔法を発動させた。
一気に切り裂かれ、消えていくモンスターたち。

そして辺りからモンスターが消えた。





その後、ルックの魔法によって城に帰ったイオは、ホウアンに手当てを受けた。
すぐに意識は取り戻し、ホウアンからも脳震盪だと診断を受けた。
医務室を後にし、自室へ戻る途中風に誘われる。
風の案内でついたところはルックの自室。
予想通りの展開に苦笑を漏らしながら、イオは扉を開いた。


「・・・傷は?」

さも不機嫌そうな顔でルックが迎える。
くすくす笑いながらベッドに腰掛けて、大丈夫だとつげた。
「きっと打ち所が悪かっただけだよ。」
それでも納得のいかなさそうなルックを隣に招く。

「・・・なんで助けたのさ。」

ルックはこっちを見なかった。
少し長めの髪が邪魔をして、こちらからはルックの顔が見えない。
「ルック?」
「君は知ってるはずだ。僕があんなので死んだりしないこと。」
戦闘のエキスパートが分からないわけない。
なのにわざわざ何で助けられない距離から。
「怪我までしてかばったんだ・・・」
言い終わらないうちに、ルックの両頬がつかまれた。
同時に横を向けられ、イオの顔を見せられる。
「君が、避けようともしなかったからじゃないか。」
イオの、無表情とも言える顔が目の前にあった。

この顔を、ルックは知っている。


イオの―――怒っている時の表情だ。


「目の前で、大好きな人が怪我するのを黙って見てられるわけない・・・」
そう言って、イオは瞳を潤ませた。
「君が死んだりしないのは分かってる。」

だけど、怪我をして悲しむのは君じゃない。


怪我で苦しむのは君だけじゃないこと―――分かってほしい。


泣きながら、イオはそう告げた。

目の前でぽろぽろ涙を流すイオを見て、不謹慎にもルックはかなり嬉しかった。
自分が愛されていると、実感できる。
怪我とか、命とか、本当に今までどうでもよくて。
でも、こんなに心配してくれる人が、傍にいる。
「ありがとう・・・」
呟いてルックはイオを抱きしめた。

「ル・・・っク・・・」
「泣かないでよ。そんなことで泣いたりしないでよ。」


胸がとても温かかった。


「ルックが悪いんだろう。」

「はいはい。僕が悪かったよ。」


抱きしめる腕に力を込めて。


「もう・・・全然心がこもってない!」


この人を。


「そんなことないって。」



離したくないと思った。





end

リクは「ルックをかばって怪我する坊」でした。
かーなーり、遅くなって申し訳ありません(滝汗)
ついでにあまりリクに添えてなくってさらに申し訳ありません!
リクエストの部分が全然メインじゃないです〜(涙)
・・・まあ文章力のない人間だとわかっておられると思いますので、
この辺りで許していただけるとありがたいです・・・
もちろん書き直しも可ですので!
内容は・・・とりあえず自分のことに無頓着なルック。
それがとっても心配な坊ちゃんです。
つ、伝わってもらえると幸いです(自分で言っててむなしい)
ではでは、10101hitどうもありがとうございました!




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